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2019年12月27日金曜日

高知能者のコミュニケーショントラブル2:第5章 第2節 医師アスペルガーはASDを才能と見ていた

第5章 科学や芸術に貢献し続けた「自閉的知能」


 第2節 医師アスペルガーはASDを才能と見ていた



 オーストリアの医師ハンス・アスペルガーは、社会改革者でもあったエルヴィン・レーザーが開いた診療所の小児科で働き始めました。レーザーはたとえ反抗的で気難しい子供であっても、その中に潜在的な資質を見出す能力を持っていました。子供たちを「患者」ではなく、将来の「パン職人」「教授」「エンジニア」として見ていました。

 そこでの診療は集中観察と呼ばれるもので、子供の日常生活や遊びをつぶさに観察することでした。体系的な理論はなく職人芸的なものではありましたが、「子供の生まれ持った能力や変えられる部分、異常行動の原因を明らかにして、どうすることがその子の幸せにつながり家庭や社会の中で居場所を見つけることができるのか、そしてその子の夢を実現させる方法を発見すること」を目指していました。


 アスペルガーたちは10年間に「不器用だが知能は早熟で」「規則性やスケジュールに魅了される」など類似の特徴を持つ200人以上の子供を診察しました。その子たちには神童と呼ばれていても反抗的で退学になっていたり、服を着たり風呂に入ったり歯を磨いたりなどの生活習慣を身につけられなかったり、スポーツの技能が劣るために笑われたりなどの特徴がありました。

 彼らは矛盾に満ちた存在でした。ませているのに子供っぽく、洗練されているようで世間知らずであり、不器用だが礼儀正しく、言葉の音楽的側面に敏感でありながら相互的な言葉のやりとりのタイミングには鈍感でした。これは「かならずしも珍しいわけではない」にもかかわらず、今まで見落とされてきたパターンの障害であるとアスペルガーは考えました。

 「自分の目的を断固として追い求める反面、他人からどう見られるかということには無関心だった」「あらゆることにおいて外部世界とは無関係に、自らの衝動と関心に従う」

 アスペルガーには自閉症が遺伝的なものであることがわかっていました。「どんな症例でも両親や親戚のだれかと共通の特質をもった人間をみつけることができた」からです。また「彼らは周囲の世界について驚くほど大量の情報を理解し、処理している」として自閉症者が他者からの視線を意図的に避けているわけではないことにも気づいていました。

 またアスペルガーは自閉症者の科学の才能に着目しました。「観察の際に本質を見抜く独特な目を持っている。事実を体系的に整理し、難しい作業であっても自分の理論を作り上げてゆく」。「アスペルガーは1950年代に宇宙探索が始まると、宇宙船のデザイナーはみんな自閉症の人たちなのだと主張するようになった。」「権力へのあからさまな無関心が、科学者にとって不可欠な無神論に行き着く」「自閉症の子供たちは身の回りの物や出来事を、しばしば新しい視点から見る能力を持っている。」「例えば、抽象化の能力は、科学的な試みには必要不可欠である」なとど記述されています。

 アスペルガーはこうした自閉症者特有の素質・技能・態度・能力をまとめて「自閉的知能」と命名し、自閉症者が人類の歴史の中で果たした貢献は正当に評価されてこなかったと主張しました。


 ただしアスペルガーは、自閉症を手放しで礼賛していたわけではありません。「残念なことに多くの症例では、障害であることによるプラスの面がマイナスの面を上回ることはない」と認めています。「学校の成績は芳しくなく、自分の身なりに構わず、道で知人とすれ違っても全然気づかない子供」が名門大学で准教授のポストを得たあとであっても、彼のふるまいがまだ「非常にがさつであった」と記しているほどです。

 ASDの子供は他人と距離を置いているため、子供同士を競わせるようなやり方は通用しないとアスペルガーは学んだようです。その代わり彼らは論理性・普遍の法則・客観的な本質を探し求めるとのこと。自分の興味を追い求めたいという衝動に突き動かされ、自分のために学習します。先生や他の生徒にどう思われているかには興味がなく、褒め言葉も効果がありません。アスペルガーの見立てによると、ASDの子供たちにとって最適な先生とは

みなと同じことを強要せず、
不完全なまま受け入れてくれる人物

であるとのことでした。「要するに、教師自らが『自閉症的』にならなければならない」とまで書いたようです。

(これは日本で名門校ほど校則が緩く、生徒の自主性に任せる「放牧型教育」が多いことに通じているような気がします。また前著にも書いたように、そのような学校には「お仲間」である発達障害っぽい先生方がゴロゴロしています。やはり高知能者にとって楽園なのです)

(略)

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