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2021年4月1日木曜日

地方出身親のための中学・大学受験 第15章 第3節 チャンスも増えるが、労力はさらに増える

 (略)

そして大学入試改革は、その「日本企業の採用基準に近いもの」を大学入学に必要な学力であると定義したわけです。確かに2つのフィルターだけでは測れない能力もあるはずなので、(1)(2)(3)のようにちゃんと定義したことは良いことだと私は思います。

しかしそれを大学入学の基準として採用するのであれば、高校生も、その親も、高校も、大学も、凄まじい労力を費やしてお互いを見極めなくてはなりません。

つまり

これからの高校生は「単に勉強するだけ」では足りず、大学への「就職活動」を同時並行で行わなくてはならない。逆に大学も「採用活動」に手を抜けない。

ということになります。


これは間違いなく、優秀な学生を求めている大学にとってはチャンスとなります。というのもペーパーテスト一発だと、どうしても目的意識が弱かったり、自発的でなかったり、周囲とうまくやれない学生が混ざってしまいます。しかしこの方法なら大学側が事前に見極めることができて、「これだ!」と思う生徒を一本釣りすることもできます。

その代わり、「受験という意味での学力」は今までよりもどうしても落ちるでしょう。というのも学力は受験直前の数か月で特に伸びることが多いのですが、その成長機会を失うからです。また受験生だからと勉強だけしているわけには行かず、ポートフォリオ映(ば)えするような活動を意識して行わなければなりません。大学としてはたとえ学力が低下してしまっても、それを補って余りある将来性を持った学生を入学させれば良いのです。

ただし「そのような理想通りに行くのか?」という疑問は残ります。単に「自己アピールだけが得意で、学力や思考力に欠ける学生ばかり集めてしまった」というオチが見えているような気がします。

特に大きな問題は、誰がその選別を行うかということです。入学を決定する人物や部署はその大学の将来を握っており、考えようによっては単に科目を教えるよりも重責を担っています。その仕事を片手間で行うのは無理ですし、いい加減な「採用」をしていたら大学があっという間に没落します。権限が強いポジションだけに、強い誘惑や圧力がかかることもあるでしょう。各大学は生き残りを賭けて、企業の採用活動にほぼ等しいことを継続的に行わなくてはならないということです。


一方この制度は、積極的な学生にとってチャンスが広がることを意味します。目指す大学があればまずは推薦AOにチャレンジし、それがダメでも一般受験で再チャレンジできます。また志望理由を考えてそれに向けた準備をするうちに、人生について考えたり自分を知る機会も増えます。学校で漠然と「何に使うかわからない知識」を詰め込まれるより、自発的に勉強するようになるかもしれません。

ただし問題は、「それを高校生に自分だけでやらせるのか?」ということです。勉強の片手間に自分で進路を考え、そのための調査や作業をサクサクこなす高校生はごく稀でしょう。すると結局は親や学校やコンサルが手伝うことになり、その準備を中学から始めないとならないかもしれないのです。


これまで高校での進路指導は「XX大を受けたいです」「いいと思うよ。だったらコレもやっときな」ぐらいで終わっていました。親も同じです。なぜなら「高校では友人と楽しみながら基本となる知識を拡げるだけでいい。本格的に進路を決めるのは大学に入ってから」という意識が強かったからです。

しかし高校の先生方は今後、それに加えて推薦AOで「採用」されるための活動を助言したり、生徒のポートフォリオを確認する作業に追われるでしょう。

親も同じで、子供の大学進学にはなるべく力を添えてあげたいと思うはず。入試一発勝負ならほとんど子供の学力任せですが、推薦AOなら親の力が介在する余地が大きくなります。すると「子供の学力」という局地戦に留まらず、「親のカネ・コネ・権力まで動員した総力戦」になることを意味します。

一般入試は子供の学力勝負の「局地戦」だが、推薦AO入試は親・学校・塾・コンサルまで巻き込んだ「総力戦」になる

(略)

地方出身親のための中学・大学受験 第14章 第6節 「学歴フィルター」の信頼性は下がる

 (略)

これまで日本企業の採用活動においては

「学歴フィルター×体育会フィルター」 

という基準が良く機能していたように思えます。

「学歴フィルター」で最低限の知識や潜在能力を確保し、「体育会フィルター」で目的意識・根性・礼儀・上下関係など組織人として必要な素質を持っていることが期待できたからです。

しかしこのうち「学歴フィルター」が効かなくなるとすれば、各企業ともそれに代わるものを探さなくてはならないのかもしれません。たとえばある程度の学力を要求する仕事では、採用時に高校名を参考にするようになったとも聞きます。大学名はもはや学歴フィルターとしては当てにならなくなってきたということです。

 (略)



地方出身親のための中学・大学受験 第9章 第5節 学力分布は男が広く、女は狭い

(略)

 さて難関校になるほど男子の比率が上がる理由は、「受験科目そのものが男に有利」という以外にもうひとつあると私は考えています。それは

男子の方が学力のばらつき(標準偏差)が大きい

ということです。

学力偏差値で言うと、全体の標準偏差は10になるはずです。しかし実は男子の標準偏差はそれよりも大きくたとえば12ぐらい、女子はそれよりも小さくて8ぐらいではないかと思うのです。その分布をイメージで示すと図表 20のようになります。


図表 20: 男子の学力差は激しい(=分布が広い)

 


おそらく男子の方が学力のばらつきが大きく、この図で示すようにピンからキリまでの差が開いています。だから上位校に行けば行くほど男子の比率が増えるわけです。

しかし女子は平均近くに多く固まっているため、そこから平均に近づくにしたがって女子比率が高くなります。おそらく上位6-7割(偏差値47-44ぐらいよりも上)を取れば、女子の比率がかなり高くなるでしょう。これは大学進学率が3割程度だった時代には男子学生が多かったのに、5割に近づいたあたりから女子学生のほうが多くなったという歴史的事実と整合的です。

あるサイトでは簡易モデルを使ってこれを計算しており、「男女同数になるのは上位27.4%」「上位50%ではすでに56対44で女子の方が多い」と結論づけていました。また「知能は測れるのか - IQ討論 (アイゼンク・ケイミン1985年) という本には、これとほぼ同じ男女の知能分布が描いてあったそうです。もちろん何のデータを使うかによって多少のズレはあると思いますが、おおむね我々の経験則や図表 20と近いのではないでしょうか。

(略)

地方出身親のための中学・大学受験 第6章 第1節 数学は若い方が有利な「徹底した積み上げの学問」

(略)

 おそらく小学校で、いや人生で最も大きな数学的ハードルは分数ではないかと思います。これが理解できないと比・割合・速さをはじめ、それ以降の数学的な学習はほぼ不可能となります。「最近の大学生は分数ができないので大学に入る前に補習を行っている」と聞きますが、それも不思議ではありません。世の中の「数学嫌い」のほとんどは、そもそも分数からして理解できていないことが原因なのではないかと私は思います。

分数をナメるな!

みんな分かった気になっているだけで、実はわかってないやつが多いんだぞ!

しかし本人たちは「自分は分数がわかっていない」と自覚してはいません。小学校のレベルでは、公式をあてはめるだけで解けてしまう問題が多いからです。また教えるほうも、自分が教えている相手がまさか分数を理解できていないとは思っていません。基本はわかっているのに応用が苦手なのだと思い込んだまま、「比が弱い」「割合が弱い」「速さが弱い」などと表面化した部分だけで判断してしまいます。

しかし実は逆です。分数が理解できていないから、比も割合も速さも理解できないのです。

このように算数は、ひとつの単元が理解できないとその先の学習がほぼすべて無駄になってしまいます。図表 13の学習曲線イメージで言えば、真ん中あたりの急上昇カーブに乗れないのです。すると「わからないから嫌い → 嫌いだからやらない → やらないからわからない」という負のスパイラルが発生し、「数学を回避した人生」を選択せざるを得なくなります。

(略)



地方出身親のための中学・大学受験 第4章 第5節 中学受験の偏差値は低く出る

 (略)

首都圏では2015年以降、中学受験する児童の比率が増え、2019年には14%程度になったと推定されています。これらの児童はおそらく、それぞれの小学校で上位2割には入っているでしょう。母集団のレベルが高いため、かなりの難関校でも偏差値が低めに出るのです。

中学受験をする時点で、その児童の学力は同学年の上位2割に入っている可能性が高い

それに対して高校は、高校入試のない中高一貫以外ほぼすべての中学生が受験します。そこには勉強があまり得意でない生徒も母集団に含まれるため、難関校の偏差値が一気に跳ね上がります。たとえば中学受験では偏差値50ぐらいだった学校が、高校から入ろうとすると65以上になるような現象がざらに起きます。

 (略)

したがって難関校の偏差値は中学受験が最も低く、次が大学、そして高校受験が最も高くなる傾向があります。

同世代の中で同じ順位でも、受験偏差値は次のような順序になる

中学 < 大学 < 高校


これを図で説明しましょう(図表 11)。かなり大雑把な説明ですがご容赦ください。

図表 11: 中学・高校・大学受験の分布と偏差値

 (略)


仮にある子供がいて、同世代の中で学力が上位10%でかなり賢かったとします。しかし中学受験は上位2割の子供の争いなので、その子は平均的でしかありません。つまり中学受験の偏差値は50近辺ということです(図表 11上段)。

 (略)

乱暴に言い切ってしまえば

中学50 ≒ 高校65 ≒ 大学55

ぐらいのイメージですかね。

(略)

地方出身親のための中学・大学受験 第2章 第6節 「率」で見ると全く違った風景になる

 ではそのような観点から、学校別の東京国公医率のランキングを見てみましょう(図表 3)。これはたまたま2019年のデータであって毎年変動するわけですが、考え方の一例として解説します。東大と京大の医学部は重複しているので除いています。また掲示板に貼ってあったデータを加工したものなので、間違いがあった場合はご容赦ください。

図表 3:  2019年の東大・京大・国公医率 

 



まずトップは東京の筑波大附属駒場高校、略して筑駒(つくこま)です。浪人も含めた数字では、なんと84%が東大・京大・国公立医学部レベルに入るというバケモノ学校です。それ以外の進学先を見ると東工大と一橋大がそれぞれ3名、阪大・神戸大・首都大学東京・東京農工大がそれぞれ1名と十分すぎる高学歴です。

筑駒の実績を調べてみると私立大にもそれなりに受かっていますが、学力の割に合格者が少ない気がします。やはり滑り止めや場慣れのために私大を受けようとも思わない人が大勢いるのではないかと推測します。基本的には早慶が多く、防衛医大・自治医大なども含めた医学部に合格していますから、やはりとんでもない学力を持った学校と言えるでしょう。たとえ私大に合格しても、進学を考えるのは浪人した後であることが多いようです。

(略)

地方出身親のための中学・大学受験 第2章 第4節 大学合格実績の基本は東大・京大・国公医合格率

 世間では、東大がブランド化しています。

東大をテーマにしたドラマ・漫画・テレビ番組はひとつの大きなジャンルとなっています。漫画で言えば「東京大学物語」「ドラゴン桜」。テレビでは「東大王」など名前を冠したクイズ番組もありますし、タレントが東大を目指す企画もしばしば目にします。東大生のユーチューバーも増えています。

しかしこと大学受験に関する限り、東大だけを最高峰だと考える風潮は時代遅れと言えるでしょう。もちろん東大は優秀な生徒を集めているのですが、各地域ともローカル化が進む中で京大を外すのは関西やその近辺の優秀層を見逃すことになります。そして東大・京大と同等かそれ以上の学力を必要とする医学部(医学科)を外して大学進学実績を語っても無意味なのです。


図表 2は国公立医学部医学科と東大・京大の理系学部の難易度(偏差値)を比較したものです。文系は医学部と比較できないため省略していることをご容赦ください。

図表 2: 国公立医学部医学科と東大・京大の偏差値を比較(理系のみ)


 

左側には東大・京大の学部別偏差値が並んでいます。まず驚いたのは偏差値的に「東大が完全に京大の上にいる」ことです。我々の時代にはもっと拮抗しており、京大の方が上回っている学部もあったように記憶しています。これも東京一極集中やローカル化の影響なのかもしれません。

それに対して右側の国公立医学部医学科の偏差値は、東大や京大とほぼ遜色ないことがわかります。東大・京大はもちろん阪大・東京医科歯科大・名古屋・九州まで、医学部は東大理一よりも難関か同等です。それ以外の国公医医は少なくとも京大レベルにあり、それを下回っている方がむしろ例外的という状況なのです。

したがって現在は、国公立医学部(医学科)を除外して大学合格実績を考えることに意味がなくなってしまったのです。

(略)

地方出身親のための中学・大学受験  第1章 第3節 「高校入試がなくなる?」新たに加わる強力な理由

 そしてここに新しく、「中学受験をする」強力な理由が加わろうとしています。

それは

難関校が次々に高校募集をやめ、「完全中高一貫」に移行しつつある

ということです。

つまり今までのように「高校受験で頑張れば良い」とのんびり構えていると、第一志望にしていた高校が高校入試(募集)そのものをやめてしまう可能性が高くなってきたということです。この流れが読めているのであれば「良い高校に入りたければ、中学受験をしたほうが良い」という結論になります。


2019年2月、東京都立の中高一貫10高のうち併設型として設置されていた5つの学校が2022年までに高校募集を停止することが公表されました。これらは武蔵・富士・両国・大泉・白鷗など、昔から知られた伝統ある名門校です。

これらの学校はこれまで中学入試を行い、さらに追加で高校入試を行うことで生徒を確保して来ました。たとえば都立武蔵の場合、2020年(2019年度)の中学募集人員は男女計120名です。高校からは推薦や入試でさらに80名が加わり、合計200名となります。それが3年後に高校募集がなくなるのですから、おそらく中学入試で200名を確保することになるのでしょう。


ちなみに中高一貫教育には3つのタイプがあります。

  • 中学入試だけ行って高校入試を行わず、中高6年間をひとつの学校として過ごす中等教育学校。あるいは完全中高一貫とも呼ばれる。
  • 高校とそれに附属する中学で構成され、中学入試だけではなく高校入試からも入学できる併設型
  • 併設型よりもさらに緩やかに、中学と高校が協力する連携型

つまり東京都立中高一貫10高のうち、半分が「併設型」から「完全中高一貫(中等教育学校)」へと移行するということです。

そして実はこの動き、都立だけではありません。

私立の本郷高校は2020年を最後に、豊島岡女子学園は2021年を最後に、それぞれ高校入試を取りやめることを発表していました。千葉の渋幕(渋谷教育学園幕張中学・高等学校)も将来の高校募集停止を見据えて制服をリニューアルしたと報じられています。

名だたる名門校や難関校が高校募集をやめ、完全中高一貫へと変貌しようとしているのです。


これは中学に入ってから勉強に本腰を入れ、良い高校に入ろうと考えていた子供やご両親にはあまりにショッキングな出来事です。
たとえばこれらの学校に、高校から入ろうと勉強していた中学生。
今回の都立5高校のように3年間の猶予が与えられていればまだマシですが、それ未満の準備期間しかなければいきなり志望校が消滅したように感じると思います。

(略)

地方出身親のための中学・大学受験  ご注意、および参考資料サイトご案内


どのような地域にもそれぞれ歴史や人脈があり、それぞれの学校に特色や伝統があります。

しかし地方から出てきた第一世代は、大都市に長く住む人々が持つ微妙な感覚がわかりません。ましてや都市部では学校や職業の選択肢が数え切れないほど存在し、全部について知ることは不可能です。それらの要因をすべて考え始めたら、何が正解なのかわからなくなってしまいます。

したがってどうしても

地方出身第一世代は子供の受験を考えるときに、大学合格実績を重視する

ことが多くなります。私もまさにそのパターンです。


この本は子供の進学先を考える上で、よほど「我が家の教育方針」と「その学校の校風や教育方針」が大きく違わない限り「なるべく学力の高い友達が集まるところに行った方が楽しいに違いない」という前提で書かれています。気に入った校風や教育方針を持つ学校がいくつかある中で、最難関に入る確率を高めるために親は何をすれば良いかということです。

そのような考えは「学歴至上主義」であり「偏差値脳」であると批判されるかもしれません。特に大都市で育った人々から見れば、理解が浅く思える部分が目立つかもしれません。そんなときは「これが田舎モンの限界か」と笑ってお許しください。もしそれぞれの学校について校風・伝統・人脈などを知りたいのであれば、おそらくその地域出身の方が書いたもののほうが参考になるでしょう。

(略)

本書を書くときに参考となった資料などは、以下のウェブサイトに整理してあります。興味のある方は訪問してください。



地方出身親のための中学・大学受験 まえがき:大都市の中学受験は「地方とは全く違う」

 

【どんな本か】

本書は「地方から出てきて都市部で子供を育て、受験について考えるようになった親たち」のために書いた本です。

内容としては私自身が子供の受験のために「調べたこと」や「考えたこと」を整理しています。その結果、以下のようなことが起こると予測しています。

  • 今後は高校入試を廃止する学校が増え、中学受験が過熱する
  • なぜならば大学受験や学生生活などを考えた時に、完全中高一貫システムが優れているから。
  • 今までは子供にとって「人生の最初の岐路」は高校受験だったが、それが中学受験になるため3年以上早まるということ。
  • 大学受験も米国型になり、推薦AO入学はさらに増える
  • それは大学と受験生の双方にチャンスを増やすが、同時に「学力以外の競争が激化」することで関係者の労力が激増する
  • 推薦AOの増加は富裕層・有力者・都市・私立に有利であり、長期的には「格差拡大」と「階級固定化」を招く
  • 大学受験に関して大人の役割が増えるために子供の自主性や独立心が育ちにくくなり、若者に不公平感や閉塞感が拡がる可能性がある


これらのことは将来起こることの「予想」ではなく、今まさに起きつつある「現実」です。このことを知らないと、子供の受験についていろいろ調べて決断を下しても報われなくなる可能性があります。

日本の受験界ではこれまでに何が起きており、これから何が起きるのか?

本書を読んでその流れを理解すれば、あなたが「子供にどのような教育を与えるか」を考えるための大きなヒントになるでしょう。


【あなたの時間と労力を省く】

おそらくあなたも3年以上の年月や労力をかけて、子供をひとりふたり中学受験させてみれば私と同じぐらいの情報を得られると思います。

しかし人生には

「それでは遅すぎる」

ということがあります。

たとえば自分の子供には「中学から勉強をがんばって良い高校に入ってればいいよ」と助言していたとします。するといきなり

第一志望にしていた高校が募集廃止

を発表したりします。憧れの志望校が突然「消滅」してしまったことに、あなたはショックを受けるかもしれません。


しかし厳しいことを言うなら、それは「運が悪かった」だけではありません。世の中の流れから当然そうなると予測されていたことを知らなかった結果なのです。

自分の情報不足・認識不足のせいで子供の進学が不本意な結果に終わるのだとすれば、あなたは一生かけてそれを悔いることになるかもしれません。

たしかに忙しい毎日の中で、子供の受験について「ルールを確認し」「戦略を立て」「実行する」のは大変です。自分で必死に情報を集めて考えたつもりでも、経験がないためにどこか見落としがあったり、全体が見えるまでに時間がかかってしまうのです。もし都市部での受験が自分にとって初めての経験であるなら、まずは経験者から話を聞いて概要を把握すべきだと思います。

子供の受験が終わってから

「あれはそういうことだったのか」

「今にして思えば、そうなるのも当然だよな」

「もっと早く気付いて対処すべきだった」

という思いを、なるべく減らしたいのです。

本書はあなたの「時間と手間を省き」「迷いや後悔を減らす」のに、きっと役立ちます。


【知っていれば余計な苦労や出費が減る】

ということで塾代や学費に何百万円・何千万円も払う前に、まずは本書で「都市部の受験事情」の全体像をつかんでおくことをお勧めします。

大学受験をいったんのゴールとして想定し、そこから逆算して「今なにをすれば良いのか」とスケジュールを立てるのです。その結果あなたの時間と労力は大幅に節約され、お子さんの人生に選択肢を増やすことができると考えます。

もともと都市部の受験事情は地方とはレベルが違うのですが、それに加えて現在は大学入試が大きく変わろうとしています。ルールが変われば当然、必勝法も変わります。自分の過去の経験をそのまま子供にあてはめて、

「そんなに難しく考えないで、とりあえず地域トップの国公立に行っとけばいいじゃん」

という「田舎あるある進学先選び」では通用しないのです。


【受験の「要素」を「構造」に落とし込み、「体系的に理解」する】

本書はあなたが受験情報に接するにあたり、その理解度を飛躍的に高めることを目的としています。

数多くの断片的な情報の中から「本質的な要素」を選び出し、それを「構造」に落とし込むことで「体系的な理解」を助けます。その結果あなたが、洪水のように溢れる情報の中でも「宣伝」「攪乱」「思い込み」などに惑わされることなく、「より速く」「より適切な」判断ができるようになると信じます。


しかし、だからと言って

「あなたも子供に中学受験させるべきです!」

と主張する気はありません。

本書を読んだ結果「うちの子供にそんな競争はさせない」「子供が(あるいは自分が)耐えられそうにないからいったん見送る」という決断もアリだと思います。なぜならば、学力競争・学歴競争に終わりはないからです。

(略)


電子書籍出版のお知らせ:「地方出身親のための中学・大学受験 その全体像と基本戦略」 の目次と内容を一部お見せします

 



下記の電子書籍を2021年04月02日に発売しました。

目次と内容を一部お見せします。




[電子書籍]

地方出身親のための中学・大学受験 その全体像と基本戦略







高校入試がなくなってゆく!? 

大都市圏の名門校が次々に高校募集を停止している。大学受験には「完全」中高一貫システムが強いなどがその理由だ。これからはますます良い高校に入る選択肢が狭くなり、中学受験が増えて行くだろう。「人生最初の岐路」が小学校高学年にやってくるということだ。これは子供の成長が2年早まっていることや、知識社会におけるゴールデンエイジの学力育成を考えると当然の流れとも言える。

その先にある大学入試では推薦AOが増加し、学力勝負の一般入試が減り続けている。これは大学と受験生の双方にとってチャンスが拡がると同時に、家族や高校側の労力も激増すると考えられる。学力競争の代わりに業績ポートフォリオを作るための競争が激化し、学習塾だけでなく入試コンサルが発達するだろう。この変化は富裕層・権力者・都市部などに有利なため、社会階層の固定化を助長し不公平感が増す恐れがある。

その他にも「中学受験がブームになる構造的理由」「大学受験の医学部志向とローカル化」「大学合格実績は何を見るべきか」「中高一貫システムが優れている理由」「進化する知力・学力の育成メニュー」「偏差値の性質」「科目別学習曲線と優先順位」「高校募集停止は必然」「内申書(調査書)の問題点」「推薦AO入試増加の原因とそのインパクト」「米国型入試の光と影」などを収録。

大都市に出て子供の受験に悩む地方出身の親たちへ。「何が」「どういう理由で」「都市部の受験はこうなっているのか」「地方との違いは何か」を体系的に解説。断片的な情報や宣伝に振り回される前に、構造的な理解を身につけておくことができる。

受験について何を調べるにしても、まずはこの一冊で全体像をつかんでから!
(約153,000字)



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今回も情報源等をフォローするため

参考資料等ポータルサイト

を用意しました!
読みながら参照するも良し、最後に一気に読むも良しです。
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第1章 新たな中学受験ブームの幕開け 

 第1節 中学受験をする「前向きな」3つの理由
 第2節 中学受験をする「後ろ向きな」3つの理由
 第4節 小3の冬に「人生最初の岐路」が来る

第2章 大学入試「近年の傾向」と「必勝法」

 第1節 大学合格実績を上げるには、中学受験で選抜するのが近道
 第2節 医学部志向の高まり
 第3節 地元志向の高まり(ローカル化)
 第5節 東大志向が特に強い学校の特徴
 第7節 大学受験は中高一貫校の「圧勝」
 第8節 大都市の人脈と学校選び

第3章 「中学から本気出す」では出遅れる

 第1節 学力は小学校高学年で大体わかる
 第2節 「受験は課金ゲーム」は半分当たっているが
 第3節 脳は6歳までに9割できあがり、12-16歳で完成する
 第4節 スキル習得に最も大事な「ゴールデンエイジ」
 第5節 学力にもスポーツのような「育成理論」と「トレーニングメニュー」がある
 第6節 子供の成熟が2年早まり、人生の分岐点も早まった
 第7節 知力を高めて「仕事のプロ」になれば何兆円でも稼げる時代
 第8節 進化する知力・学力の育成メニュー
 第9節 早期教育には3つの意味がある
 第10節 バランスの取れた人間を目指すのではなく、チームとしてバランスを取る時代

第4章 意外と知られていない偏差値の性質

 第1節 偏差値は学力を基準化したもの
 第2節 偏差値の差は平均から離れるほど重い
 第3節 トップ校の偏差値2差は相当大きい
 第4節 学校のレベルによって適切な偏差値表を選ぶ
 第6節 サピックス(SAPIX)偏差値40台には名門校や伝統校がひしめく
 第7節 都市部の中堅校=地方のトップ校
 第8節 都市部中学と地方高校の偏差値をムリヤリ比べる方法
 第9節 偏差値は入学ボーダーを示し、トップ層はまた別

第5章 科目別学習曲線と優先順位

 第1節 受験教科ごとの特性。まず何からやるべきか?
 第2節 「理社が得意」は勉強の適性あり。マニアックな子供をどう育てるか
 第3節 「受験は暗記」と考えては難関校に太刀打ちできない
 第4節 学習曲線の特徴「積み上げ型教科」と「独立型教科」

第6章 学歴・所得・階級の決め手となる「算数」

 第2節 算数が得意な子は高い地位に就き高給取りになりやすい
 第3節 中学受験は算数(強S型)で決まる
 第4節 しかし算数が難しすぎると他科目で決まってしまう
 第5節 単位を意識し、数字や式の意味を考える
 第6節 算数を「言語パターンマッチング」で教えるのは危険

第7章 進学先のレベルを決め、学習法を教えにくい「国語」

 第1節 0点はありえないが満点も難しい
 第2節 国語の基礎知識は「習慣」で身につける
 第3節 模範解答が正しいとは限らない
 第4節 大きな差がつく「読解力」「記述力」
 第5節 「読解力」「記述力」も遺伝する
 第6節 国語力も学歴・所得・社会階層に直結する
 第7節 国語が「できる人」は、「できない人」にどう教えて良いかわからない。
 第8節 出題されそうな本を読んでも意味がない

第8章 応用としての「理科」「社会」

 第1節 理科は「積み上げ型教科」と「独立型教科」が混在
 第2節 社会は「記憶」がベースだが
 第3節 「独自のこだわり」は素晴らしい素質
 第4節 関西の中学受験では社会が存在しなかった

第9章 そもそも受験科目は男子有利

 第1節 「浅野ギャップ」に見る数学力の重要性
 第2節 そもそも受験科目は男子に有利
 第3節 東大合格者の6人に5人は男子
 第4節 多様性と機会平等のバランス

第10章 中高一貫はなぜ有利か

 第1節 大学受験の必勝法は「中高一貫」で「英数の先取り」
 第2節 理社の細かい知識は高2から詰め込む
 第3節 上下11年の濃密な人間関係
 第4節 体育祭・文化祭・組織運営と学閥
 第5節 中だるみの時期を有効に過ごす
 第6節 ずっと「たるみっぱなし」の生徒もいる

第11章 中高一貫校の高校募集停止は必然

 第1節 東京や茨城で公立中高一貫が急増
 第2節 中入組と高入組では大学合格実績が全く違う
 第3節 高校入学(高入)があると中高一貫の良さが半減
 第4節 「中高一貫への高入を避ける」という考え方
 第5節 国立附属で望まぬ外部受験をしなくてはならないリスク
 第6節 国立附属中学から高校に上がれない確率

第12章 地方との違い、昔との違い

 第1節 小学校の勉強をいくら頑張ってもトップ中学には行けない
 第2節 「地方の学力が高い子供たち」は高校で合流したものだが
 第3節 学力と趣味の「住み分け」が学校ごとに行われる
 第4節 公立中学は本格的に「中学受験組の残り」になるのか

第13章 高校受験と内申書(調査書)問題

 第1節 内申書評価への不信感
 第2節 担任ガチャに当たるか外れるか
 第3節 内申美人と内申ブス
 第4節 もともと受験戦争を回避するためだった内申書
 第5節 内申書偏重は「圧政」につながる
 第6節 「良い子でなくてはならない」強迫観念
 第7節 それでも解消されない「学校間の評価格差」
 第8節 内申・推薦に「向く生徒」「向かない生徒」
 第9節 内申書競争を避ける3つの方法

第14章 大学の推薦AO入試増加で「附属校オプション」の価値高まる

 第1節 推薦・AO入試拡大は主に「少子化に悩む大学側の事情」
 第2節 長期的には「入試形態による学力格差」と「学力が高い生徒が上位校に行けないパラドクス」が起こる
 第3節 アメリカ型産業と教育システムへの過渡期
 第4節 「バランスの取れた人材」から「バランスの取れたチーム」へ。過渡期に起こる問題
 第5節 学力が高い生徒が上位大学に入れない!
 第7節 「私立大の定員厳格化」で混乱に拍車
 第8節 大学附属の「オプション価値」はますます高くなる

第15章 米国型大学入試の光と影

 第1節 日本の大学受験も米国型に変わるか
 第2節 もし国公立大も推薦AOが多数派になったら?
 第4節 階級の固定化を助長し、不公平感が増す
 第5節 米国は日本以上に「カネ・コネ社会」で「同調圧力が強い」
 第6節 米国では前途有望な若者が突然自殺する
 第7節 不満が頂点に達した韓国の先行事例

あとがき:学力は「自由と豊かさ」を手に入れる最強の武器である