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2016年10月12日水曜日

紙の出版は「失敗できなくなった」


いわゆる出版不況で、昔と変わってきたなと感じることがあります。

以前は各社とも、たとえ失敗に終わっても新しいことや野心的な企画にチャレンジする余裕がありました。

何度も挑戦しているうちにニーズを見つけたり、良い筆者を発掘できるさという長期的な視点を持てたのです。



しかし本が売れなくなると、「確実に売りたい」と思う気持ちが強くなります。

売れ筋のテーマや、売れ筋のタイトルを後追いすることになります。

もし売れないと、企画を押した編集者さんの立場が悪くなります。

どうしても「守りに入ってしまう」のではないでしょうか。



これはしょうがないと思います。

活字中毒の私は、読む文字数は昔より増えています。

しかし本の購入に費やす金額は減っているのです。

どうしても手元に置きたいものは紙の本。

サッと読んで後で見直す可能性が低いなら電子書籍。

あとの調査はネットで済ませてしまいます。

このような人は多いのではないでしょうか。



したがって紙の本だけ見ていると、


利益が出ない
 ↓
新しいチャレンジができない
 ↓
市場や著者が開拓できない
 ↓
コンテンツがネットに流れる
 ↓
利益が出ない


という悪循環に嵌っているように見えるのです。



しかし著者としての立場から言うと、紙の本は執筆以外の労力が大きいのです。

  • まず、企画を受けてくれる出版社・編集者を探さなくてはなりません
  • しかし売れないと、頑張ってくれた編集者さんの立場が悪くなります
  • だから最初から売れる本を意識しなくてはなりません
  • 斬新な企画、遊びの企画が通る可能性は低いです
  • 別のジャンルへの挑戦は、ブランド価値の毀損リスクがあるのでイヤがられるでしょう
  • 校正・出版まで時間がかかります
  • タイトルを間違えたら売れません
  • ターゲットを間違えて宣伝すると効果が出ません


これらの条件を一度に揃えるとなると失敗は許されず、偶然の要素も大きくなります。

試行錯誤をしながら金脈を探ってゆくような地道な努力はできません。

「完成度が高く、確実に売れるものを一発で出さなければならない」

そう考えると、原稿を書くこと自体が億劫になってしまいます。

私はブログやレポートはいくら書いても苦にならないのですが、紙の出版を前提にするといきなり筆が進まなくなってしまう性格なのです。




正直なところ、書いた本がどれぐらい売れるかは自分でもわかりません

未知の領域に思い切って踏み込むと、思わぬ層の人々が買ってくれて重版がかかったりします。

逆に自分では傑作だと思っても、売れ行きはからっきしだったりします。

別のタイトルだったらもっと売れたのかな、などと後ろ向きで意味のない空想をしてしまいます。



ですから「出版の前に市場調査をできれば良いのに」と、昔から思っていました。

読者はこの本の中で、どのテーマや文章に共感するのか。

どんな人がどんな目的で、何冊ぐらい買ってくれるのか。

それらを確かめながら修正し、完成度を高めて行きたいのです。



そして今回、アマゾンのキンドル・ダイレクト・パブリッシング (KDP)というものを知りました。

実はある企画について相談している合間にこれを思い出し、ちょっと調べようと思っただけでした。

しかし読んだだけでは理解できないので実際に原稿をアップロードしたところ、電子書籍がすぐに出来上がってしまったのです。



これはすごい、と思いました。

電子書籍という現物があれば、その実績や反応を企画・マーケティングに生かすことができます。

とりあえず「マイ書店」で作品を売りながら、編集者や出版社と企画を詰めることができます。

遊びや野心的な企画も、手軽に行うことができます。

全く反応がなければ「紙で出版しなくて良かったね」と胸を撫でおろします。



今は売れない作品でも、タイトルや構成を工夫すれば売れるようになるかもしれません。

時代を先取りし過ぎてお蔵入りになった作品も、何かのきっかけで日の目を見るかもしれません。

いろいろ試行錯誤をしながら、時間をかけて金脈を探ることができます。

そして何よりも大きいのは、

出版までの労力が激減して執筆意欲にブレーキがかからなくなった

ことです。

私のコンテンツを「末端からマスへ」乗せるための、強力な武器を得たのです。



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