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2016年10月16日日曜日

第4章第3節 認められていれば貧乏にも孤独にも耐えられる



(略)
承認欲求が満たされないと、男はむなしさに襲われます。職場と家庭、どちらかで認められていれば大丈夫です。しかし両方において「繰り返し軽んじられ、馬鹿にされる環境」にあると男は心を病んだり、失踪したり、自殺したりします。行き場のない攻撃性が自分に向いてしまうのです。
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「この無能が!おまえそれでも営業部長か!」
「社長、申し訳ありません。」
「ノルマを果たせなければクビだぞ!クビ!代わりはいくらでもいるんだからな!」
部長は肩を落とし、帰路についた。
チェッ、そもそも会社が傾いたのは社長の判断ミスじゃないか。開発が遅れてライバルに先を越されるし、経理部長がすぐ辞めるから俺はそっちも見なきゃならないし。だいたい社長が遊ぶカネを給料に回していれば、若手が大量に辞めることもなかった。それを俺のせいにしやがって。しかしクビになってしまうのは仕方ないにしても、家族を路頭に迷わせるわけには行かないんだよなあ。
やっとのことで家に帰ると、奥様が玄関で待ち構えていた。
「あなた、今月の給料はまだですの?」
「ああ、遅れて申し訳ない。取引先からの振り込みがまだなんだ」
「このままだと困ります。子供の教育費が払えないですわ」
「わかってるよ」
「しっかりしてくださいな。我が家の大黒柱なんですから」
部長は疲れた体をベッドに横たえながら考えます。
どいつもこいつもカネ・カネ・カネ。俺だけに仕事や責任を押し付けて、カネだけむしり取って行きやがる。俺の稼ぎで食っているくせに、無能だの役立たずだの馬鹿にしやがって。こいつらのために働くのも、何だかアホらしくなってきた…」
次の朝、部長はいつものように家を出ました。
しかし会社から電話があって、出社していないが何かあったのかとのこと。
夕方には警察から電話があり、雑木林で首を吊った部長が発見されました。
ポケットには遺書があり、こう書いてあったそうです。
「私はもう疲れました。死亡保険金が入るので、それで最後の義務を果たしたことにしてください」

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(以下略)



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