(略)
管理通貨制度を採用している先進国の通貨にとって、金銀財宝による価値の裏付けはさほど大きくありません。
たとえば直近の日銀報告書を見ると、総資産約520兆円に対する金地金(きんじがね)4400億円の比率はわずか0.085%に過ぎません(図表 3のA右側)。しかし実はこれは、買ったときの価格(簿価)で評価しているので必要以上に小さく見えるのです。そこで金地金の保有量から時価を計算し、簿価と時価を調整した総資産で割って修正します。するとバランスシートが拡大するサブプライムショック前は3.0%(同B右側)、拡大後はわずか0.7%となります(同C右側)。日銀券の価値を支えるのに、保有する金地金はほとんど貢献していないということです。
米FRBは日銀の10倍以上も金地金を保有していますが、大昔から保有しているためか簿価ベースの比率は日本よりも低い0.023%になります(図表 3のA左側)。しかし時価ベースで評価すると、実はバランスシート拡大前には全体の約27%が金地金だったことがわかります(同B左側)。ニクソンショックで金本位制から離れた後も、保有するゴールドがドルの価値をある程度支えていたということには驚きです。しかしバランスシートが急拡大した現在では、その比率は7%にまで落ちてしまいました(同C左側)。
政府や中央銀行が保有する貴金属に代わって、通貨価値を支えるようになったのは「政府の信用」です。
さらにその裏付けとなるのは、「国有財産」と「将来の税収」です。
だから「国の借金」が「国有財産」を上回るようになっても、「将来の税収」を担保に借金を続けたり通貨価値を維持することができます。
しかしその「将来の税収」の担保となっている「日本国民の担税力」「日本政府の徴税力」さえも上回るほどの借金を抱えたとき、日本円急落と円金利上昇に襲われる可能性が高いのです。
0 件のコメント:
コメントを投稿